第4話 印象に残らなかった

 彼がレコーディングする順番が回って来た。エルビスは、“インク・スポット”のヒット曲「マイ・ハピネス」を歌った。歌の途中でマリオンは、エルビスの声を聴いて何かユニークであることに気づいた。そこで、社長のサムに聴かせるためにそのコピーをとっておいた。裏面には同じインク・スポットの「ザッツ・ホウェン・ザ・ハートエイク・ビギン」を吹き込んだ。これら2曲を録音されたオリジナル・ディスクが紛失してしまった。しかし、1988年にメンフィスに住んでいるエド・リークの家で見つかった。リークの話によると「レコーディングした後、家にそのディスクを持ってきて私と私の祖母に聴かせてくれたんだ。エルビスはそれを置き忘れていったんだけど、返してくれとは決して言わなかった。見たところ彼はレコーディングの結果にあまり感激していない様子だった」と言っていた。エルビスは「誰かがバケツを叩いているような音が録音されていた」と状況を説明していた。

 マリオンはエルビスの住所を書いておいた。そして、何かあったら連絡すると約束した。彼女がサムにエルビスのテープを聴かせたが、特別な印象はなかった。サムは「彼の声は好きだ」と言っただけで、特には何もふれなかった。