第31話 スティーブ・アレン・ショーに出演

エルヴィスが「神話」とみなした者の偽りを暴こうとしないでブラブラしていることが出来ないメディア・パーソナリティーがいた。それは、テレビ番組のホストを務めるスティーブ・アレンであった。

アレンは、粗くて教養がないようなロック&ロールを見て批判するある程度の教養人で自分の流儀(スタイル)を持っている皮肉屋でもあった。
1956年、彼は8:00から9:00の時間帯でゴールデンタイムと呼ばれる日曜の夜の番組で、エド・サリバン・ショーとの視聴率争いを戦っている最中であった。

スティーブ・アレン・ショーの第2弾(以前に、1950年から1952年までNBCでアレンのショーを放送していた)は、ゲストとしてキム・ノバック、サミー・デイビス・ジュニアとビンセント・プライスを迎えた。ちょうどエルヴィスが出演する1週前が初放送日であった。
同時に、「田舎者のロック&ローラー」をからかいながらも、アレンは視聴率を上げるためにエルヴィスを自分のショーに出演させることを決めたのであった。

エルヴィスのマネジャー、パーカーは、当初エド・サリヴァン・ショーに出演させるために契約しようとエドに申し入れていた。
しかし、「私には、どんな代価を払っても私のショーで彼が出演することはないだろう」とサリヴァンは、この時きっぱりと言い放った。

1956年7月1日、ショーの舞台裏から小さな音ではあったが咳払いが聞こえた。その直後に、アレンが今日のゲストであるエルヴィス・プレスリーの紹介をはじめた。
我々の次のゲストは、みなさんも良くご存じのあの“エルヴィス・プレスリー”です」と言ったとたんに観客から悲鳴と共に大きな拍手が鳴り響いた。

悲鳴と拍手の鳴りやんだ後アレンは、エルヴィスがメディアに報じられたことについて話しはじめた。

「ある人は、一方的に解釈しているように思われる、またある視聴者は、違った解釈をされている。いろんな見方があるでしょうが、我々はお客様にすばらしいショーを見ていただくためにやるだけです。

家族全員が見ることができて、楽しむことができる、そして、我々はいつも通りにショーをやるだけです。そして、今夜、新しいエルヴィス・プレスリーを見ていただきます。みなさんはエルヴィスの最初の復帰ステージと呼ぶかも知れませんが、新しいエルヴィス・プレスリーを紹介出来ることにすごい喜びがあります」

歓喜と悲鳴に迎えられて、エルヴィスが舞台中央に登場した。
多くの観客はがっかりした。予想に反して、燕尾服と青のスエードの靴で着飾ったフォーマル・イブニング・スーツで現れたからである。


写真:スティーブ・アレン・ショーに燕尾服姿で登場したエルヴィス