第7話 試行錯誤の連続

1954年6月27日の日曜日、エルヴィスはスコッティー・ムーアの家に行った。そこでベース奏者の“ビル・ブラック”と会った。早速、3人で数曲演奏し歌った。「俺のワイフが初めてエルヴィスを見たとき、裏からでて行くつもりだったらしい」と後にムーアが語っていた。と言うのは、その時のエルヴィスの格好はピンクのシャツに黒とピンクの縞模様のズボン、白の靴そしてダックテイル・ヘアー・カット(アヒルの尻尾に似ているところから付けられた)だったからだ。

プレスリー、ムーアそしてブラックの3人で打ち合わせの後、10数曲の歌をリハーサルした。その日のリハーサル曲は「アイ・リアリー・ドント・ウォント・トゥー・ノー」「アイ・アポロジャイズ」「ザッツ・オールライ・ママ」などが歌われた。エルヴィスを歌手として売り出すことはないだろうと半信半疑ながら、しかしムーアとブラックは何が偶然起こるかも知れないと思いつつエルヴィスの歌を確認しながら演奏を続けた。その年の7月5日、エルヴィスは再びサム・フィリップスのスタジオへやってきた。

今回は、スコッティーとビルの3人で一緒にコマーシャル・レコードの録音をするためである。最初の歌は「ハーバー・ライト」だった。これは1937年にジミー・ケネディーとヒュー・ウィリアムスが作った歌で、1950年にサミー・ケイが歌って有名になった曲である。それを聴いていたフィリップスは、この歌では成功しないと思った。全く新しさはなくオリジナル的なものは何もなかった。ただ、エルヴィスの声と音楽性はその中で生かされていた。多くの歌を唄い、数時間たった後でフィリップスは「エルヴィスに間違ったやり方をしていないだろうか」と思い始めた。